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2016年3月小山 幸佑

Blue Sky with a White Sun

何日遅れかわからないほど遅れてお送りしております。

実はとっくの昔に高雄から台北に移動していたものの、気づけば台湾最終日。
台北市はここ一週間ほど雨や曇りが続き気温は昼15℃/夜10℃くらいと現地の人も異常だと言うほどクソ寒い。
街の人は皆ダウンにマフラーを着込んでいる中、南国だと思い薄い長袖ぐらいしか持ってきて居なかった自分。
不甲斐ないことに少し風邪も引いてしまい、急遽パーカーを購入…現地のユニクロにて。

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高雄から台湾新幹線THSRを終点の台北で降りて、感じたのは高尾とは全く違う「都会っぽさ」。
街全域を走る地下鉄MRTに乗る人たちの表情は皆、硬いというか、怖い、というか。
薄汚いウィンドブレーカーを着てキャリーをゴロゴロ引くツーリストスタイルも、高雄ではチラチラ見られたものの台北の人たちは全く無関心。きっと当たり前なんだろうな。その感じは東京のそれにとても似ている。
見知らぬ街の中で匿名を保っていられることに、孤独と多少の心地よさを感じる。

それでも東京と違うのは、ほとんどの人たちが道を聞く時など話しかけた瞬間に「パッ」と笑顔になるところ。
その表情の変わり様は右も左も分からぬまま1日中歩き回って疲れている時ほどホッとする。
道を聞いた金髪の若い男の子。駅員さん。大衆食堂のおばちゃん。
街中で、見知らぬ人にも笑顔を見せられるというのは素晴らしいこと。
東京と同じように見える台北も、人々の感じている幸福度は少し違うのかもしれない。心の余裕のようなものが。

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西門の大衆食堂でお友達になった「マカロン」ちゃん(生後5ヶ月)。彼女に会うために猫アレルギーをガン無視して連日そのお店に通い詰めたら、最終日おばちゃんに「明日も来るでしょ?」なんて言われてしまってちょっと寂しい。

台北ではとにかくたくさんのお友達ができました。
一つ一つのエピソードを書いているとキリがないけれど
テーマ的に取材が必要なく、街を一人でひたすら練り歩く孤独なタイプの撮影なので
ここまで深く人と関わることができるとは思っていませんでした。

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アポなし飛び入りで伺ったにも関わらずとても親切にしてくださった台北の写真学校、視丘撮影芸術学院にて。
写真を見て頂き、それぞれの撮影テーマを説明し、先生と生徒の皆さんにオススメの撮影場所等の具体的なアドバイスを頂きました。呉嘉寶先生にもご挨拶ができました。鳥原先生お計らい頂きありがとうございました。

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PA卒業生のチェンハン君とも再会。元国民党軍人が作ったという食堂で。

沢山の同年代の若者と話をして、彼らが口を揃えて愚痴っていたことは「お金がない云々」ということと
全ての台湾国民男子に義務付けられている徴兵のこと。
「アーミーに行くから彼女と別れなきゃいけないかもしれない」なんて言ってた男の子が居れば、
また別の子は体重制限を下回っての徴兵免除を狙って猛ダイエット中らしい。
縮小傾向にありつつも台湾の徴兵制度が未だに残る背景には、中国の存在。

現地の写真学校で知り合った友人に
「台湾と中国、台湾人と中国人の違いはどこだと思う?」なんて少し突っ込んだ質問をしたことがあった。
彼は「うーん…」としばらく考え込んだ後に「…マナー、かな」と言っていた。
そうか。それは大きいけれど、でもきっとそのくらいの違いしかないのだ。
そのくらい曖昧で危うい根拠の元にアイデンティティを掲げる台湾という国。
街中のそこらの電信柱には誰が貼ったか「台湾独立」と書いてあるステッカーが貼ってある。
逆に「時間の問題だ」と言う人もいる。

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千と千尋の神隠しの「油屋」の元ネタと言われている九份のお茶屋さん。

数年前の中国人の台湾観光解禁以来、街はどこも中国人観光客であふれかえっている。
大型の観光バスが連なって有名観光地へ乗り付け、団体で道を塞ぎつつガイドの三角旗を先頭に大声で喋りながらドタドタと歩く彼らを横目で見つつ、20数年前かつてのバブル期の日本人もこうだったのだろうかと想像したりした。

台湾もかつて日本だったことがあった。

撮影を兼ね数人で遊びに行った台湾人の女の子の家のテレビでは、中国の抗日ドラマが普通に流れていた。
日本軍の将校が空手で中国人を虐めていて、それをカンフーの達人がボコボコに成敗する、という内容のドラマだった。
かといって別に誰もチャンネルを変えたり消そうとすることもなく。気まずい空気が流れることもなく。
揚げそら豆(大好物)と、沖縄より遥か南の台北のスーパーで何故か普通に手に入るキットカット北海道限定小豆味をつまみながら、くだらないことに笑いながら夜遅くまで、みんなでただたたそのドラマを眺めていた。

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親切にしてくれた全ての人たちにありがとう。台湾大好きです。明日にはベトナムへ。