BLOG

2021年11月岡 杏里

土佐打刃物

土佐打刃物は、高知県を代表する工芸品の一つです。
高温に熱した金属を叩いて延ばし自由に形を作る自由鍛造と呼ばれるもので、作るものは包丁や林業用の鎌、鉈、斧、農業用の鍬など実用的な道具を幅広く扱う野鍛冶です。

高知県の山奥でこの土佐打刃物を作るのが勝秀鍛冶屋、2代目の松村幸作さんです。周りの方には「おいちゃん」という呼び名で親しまれています。
勝秀鍛冶屋は鍛冶屋と言えど、刃物だけではなく、柄や、鞘も全て一人で作り上げています。
「昔は山師が柄とか鞘を木から削り出し、自分で作ってその技術とか芸術性の高さを自慢し合っていたんだけどね」とおっしゃっていました。
自分の使う道具は自分で作るのが当たり前の時代があったそうです。現在では刃も柄も鞘も分業化し、山師自身で柄や鞘を作ることもほとんどないそうです。松村さんのように刃だけでなく、柄や鞘など全ての工程を担うのも珍しいのだそうです。
柄や鞘は大量生産が可能になっている中でも全ての工程をご自身でやられる理由について、松村さんは「使う人一人一人の手の形とか大きさとか用途に合わせて柄も鞘も作るから外注できないんだよ」と教えてくれました。

御年83歳、鍛冶屋歴50年以上。お父様から引き継いだ技法で野鍛冶を続けています。
時代と共に昔ながらの方法を続ける鍛冶屋は減り、冷ややかな目で見られることもあったそうです。
松村さんがそれでもやり方を変えないことについて「そのやり方しか出来ないし、そのやり方でさえ親父に追いついていないから」と笑っておっしゃっていました。
しかし、松村さんの作ったものしか使えないという山師の方が全国に多く居るのは、使い手の事を一番に考え、やり方を変えず、一つ一つ丹念に作ってきたからだと思いました。

続きをみる

Generated by Feedzy