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2016年6月秋元 直登
1年越しの地へ
1年前訪れたマレーシア。
都市開発により、ジャングルだった場所がどんどん高層ビル群に変わっていく。
「ここは最後の村だよ」
1年前、私にこう言ったのは、ここで知り合ったモアド・ザキというマレー系のおじさんだった。
約150年ほど前にインドネシア人がこの地にやってきて、この場所をカンポン・クリンチ(クリンチ村)と命名し、村を切り開いた。昔は深いジャングルで、長い間動物を狩猟し暮らしていたそうだ。
ザキが子供の頃、両親はラバーツリーを売って生計を立ていた。彼が小さい頃はまだ自然が十分に残っていて、毎日時間の経過をゆっくり感じ、リラックスして生きていたそうだ。しかし彼が大人になると共に日系、中華系、韓国系会社のデベロップメントにより、彼らが生きてきた土地が奪われていったそうだ。開発される度に、このジャングルを転々とし、自分の住居を築いて来た。合計5回程の引越しの後、ついに他に移り住む場所が無くなってしまった。
「他に行く当ても無いどうしたらいいんだ」
「だけどしっかりお金をもらわなくちゃな」
彼の住んでいる場所が強制撤去、買収されるのは恐らく来年らしい。土地の権利者からすればイリーガルで居住地を構える彼らに対して、どれ位お金が支払われるのだろうか。彼らは何処へ向かうのだろうか。