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2016年6月小山 幸佑

Apple And Cinnamon

2年次FWから1年ぶりのマレーシア。
前回の訪問からマレーシアは天気が悪いイメージがあったのだけれど、
例に漏れずクアラルンプールは連日雨か曇りばかり。

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KLセントラル裏のブリックフィールズという一角にあるホテルに滞在中。
マレー系、中華系、インド系の民族が混在するマレーシア。ここはインド人街として知られている場所。
舗装されつつあるKLの中でもかなり汚い方のこの地域。ギャングもいるとかなんとか。
当然そこらへんインド人だらけ。カレー屋が軒を連ね、インド人独特の体臭?なのか時折スパイシーな香りがする。
海賊版CD屋の軒先からはミドルとトレブルが壊れてるんじゃと思う程の爆音重低音でボリウッドミュージックが響く。
まだ行ったことは無いけれど、まるでインドにいるかのよう。

ババニョニャなどというのは所詮マラッカあたりの昔の一部の上流華人の道楽文化に過ぎず
3つの民族がそれぞれの民族同士でコミュニティを作り固まってしまい、
文化や経済の交流が起きにくいのがマレーシアの問題の一つでもあるらしい。
 
 
ナン+カレーのセットが2リンギット(60円!)で食べられるカレー屋さんを秋元くんに教えてもらい
ホテルの隣にあるというのもあり節約がてら良く通っている。

前回訪問時も思ったのだけれど、正直な話、インド人ってなんだかちょっと怖くて苦手だ。
無遠慮にじっーーーと見つめて来て、いつまでも目を離さないあの眼力が怖い。
半ば威圧的に注文を取り、ろくに返事もせずに去っていく。
しばらく待っているとよくあるステンレス製のプレートに乗ったカレーとナンをぶっきらぼうにテーブルに投げていく。
薄黄色に曇ったガラスのコップに入ったアイスミルクティーは上の方が冷たくて底の方は暖かい。
っつか、チーズナンって言ったのに、チーズが入ってないじゃん!!

いちいち文句を言うのも面倒臭いので、とりあえず一口食べてみる。
あぁ、これがまた…さっきまでの色々が全部笑って許せちゃうくらいにうまい。

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この地域一帯は広くリトルインディアとして知られているが、実は盲人街でもある。
「盲人按摩」の看板が並ぶ路地を、白い杖を器用に使って歩く人達を良く見かける。
 
件のカレー屋に居ても、近所のマッサージ店の人たちだろうか、良く客として入ってくる。
すると、さっきまで周囲にガンを飛ばしていた(ように見えるだけ)インド人たちが突然立ち上がる。
盲目の若者の腕を優しく掴んで椅子へ誘導し、杖を預かって彼の隣にそっと立てかける。
注文された品をテーブルに置くと、彼の手を取って皿まで誘導する。

意外とインド人も優しいんだなぁなんて思いで観察していたのだが、驚いたのは会計時。
なんと盲目の老人、財布代わりにしているのであろう巾着のポーチを、丸ごとレジの男に渡した。
レジのインド人はそれを開け、いくつかの紙幣とコインをそこから抜き取ると、袋の口を閉めて本人へ返した。

その光景を端から見ていたのだが、強烈に感動してしまった。

なんという信頼関係だ。

目が見えなければ、10リンギットと100リンギットの違いは分からない。
盲目の彼はレジのインド人に文字通り身を預け切っているのだ。
逆に、相手が目が見えないからと言って彼らの釣りをごまかしたりも絶対にしないのだろう。

どれだけの良心を蔓延させたら、こんな素晴らしい光景が日常にあるような社会になるのだろう。
 
そういえば、KLモノレールの中でも、老人や白い杖をついた人が入ってくるや否やみんなが我先に率先して立ち上がり
彼らの腕を掴んだり肩を抱いたりして席まで誘導している光景を「本当に」良く目にする。
そこにいちいち言葉や笑顔を交わしたりということはない。顔はみな仏頂面のまま無言でそうする。
クアラルンプールの人はみな自然に、当たり前のようにそうする。

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マレーシア滞在中にイギリスのEU離脱についての国民投票のニュースを知った。
 
仮に日本に移民がなだれ込んで来たとして、私たちは彼らを受け入れることができるか。
別の民族や人種、弱者を心から尊重し手を差し伸べることができるか。
「良いことがしたい」からではなく、本当に自然に、そういうことができるのか。

マレーシアって、実は凄い国なんじゃないか。

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マレーシア、実はあまり好きではなかったのだけれど、最近少し見え方が変わってきた気がする。

決して混ざり合わない色同士でも、隣合うことで素晴らしい模様を描くことができるのかもしれない。
イスラムの美しいモザイク装飾のような国。