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2016年3月小山 幸佑
Dancing Through Life
台湾、高雄は曇りが続いています。
台湾は南部が熱帯、北部は亜熱帯に属します。曇りと言っても高雄は暑い。
雲でディフューズされた日差しも強烈。加えて常時80%前後、100元札もフニャフニャになるほどの蒸し風呂のような湿度のせいで、ただプラプラと歩いているだけでも汗は噴き出すしあっという間に体力が削られる。
蓮池潭(Lotus Lake)
写真は1976年に建てられた龍虎塔。大きな口をあけた龍と虎が出入り口で、それぞれの後ろには7階建ての塔が建つ。
たどり着くにはカクカクと7回曲がった橋を渡らなければならない。これには魔除けの意味があるそう。
虎と龍はそれぞれ中が空洞になっており通り抜けが可能。虎の口から入り龍の口から出れば「善人」になれるそうだ。
撮影の合間、湖畔の露店でちょっと小休止することに。
冷たい飲み物を買うと「そこで座って飲んできな」と台湾語は分からないけれど多分こんな感じのおかみさん。
指差す先のテーブルには、おつまみを広げ昼間から紹興酒をあおっている地元のと思しきご老人3人組。
おぉ、怖そう。しかし疲れているので座りたい。恐る恐る、隣に腰掛ける。
するとまぁ、当然話しかけられる。
しかし、言葉が全くわからない。
台湾はとにかく英語が通じない。
駅のチケットやホテルのロビーの文字ならば漢字を読んでどうにか分かるものの、音として言葉になるともう全くダメ。
それでもお構いなしに台湾語で何やら一方的に喋りまくるご老人。
名刺を渡して、日本から来た写真学生であることを何とか伝える。
老人「オー、リーベンジェン!カメラ!シャオシャンシンユウ(僕の名前の台湾語読み)!!」
分かってくれた!と感動していると、ほとんど歯がない一人のご老人が徐ろに立ち上がりゴソゴソとお店の奥へ…
戻ってきた彼の手には、あぁ、うん。
紙コップ。
一応…とっくの昔に成人しているものの
旅先の見知らぬ人の勧めるお酒を飲んで良いのか、差し出された紙コップを前にして悩む。
例えばお酒に薬を入れられていて、カメラや有り金、身ぐるみを剥がされたらどうしよう。
酔っ払って騙されたらどうしよう。
フィールドワークに関わるたくさんの人に迷惑をかけることになったらどうしよう。
しかし、こういう出会いが旅の醍醐味というのも事実。
何より、到着してまだ数日、まずは台湾のことを、台湾の人のことを知りたい。
こうした旅の中で訪れる、人の純粋な善意と身の安全とを天秤にかける瞬間はとても心苦しい。
…という空気を何となく察してくれたお店のおかみさん。
すかさず「これならノンアルコールよ」と差し出されたのは…
この「保力達」という色々な意味でヤバそうな名前の栄養ドリンク。
台湾の古いエナジードリンクで、後に留学生の董くんに聞くと「若い人には人気ない笑」とのこと。
ちなみに味は…養○酒。
お爺さんたちは代わる代わる近くの露店で色々な食べ物というかおつまみを買ってきては「食べなさい」と言って差し出してくれた。
もうお腹がいっぱいと言って断っても、またどこからか買ってきては「タイワン!ハオチー!」とかなんとか言ってどんどん勧められる。
あれを食べなさい、これも食べなさい、まるで親戚の家にでも遊びに行ったような感覚。
お代を請求されることは一切なく、こんなに頂いたからとむしろこちらからお金を渡そうとしても、両手をブンブン振って制止された。
今日会ったばかりの言葉もロクに通じない見知らぬ日本の若者2人に、どうして彼らはこんなにも親切にしてくれるのだろう。
会話は基本、筆談。デタラメな漢字の羅列。
名前、年齢、どこに住んでいるか。
2時間ほど同席させてもらって結局分かったことは、ただそれだけ。
聞きたいことは山ほどあった。けれども全く伝わらない。伝える術もない。
それでもこのお爺さんたちが、恐らくこの場所でほぼ毎日繰り返されているであろうの自分たちの集まりの中に
日本から来た見知らぬ学生2人を「一員として」迎え入れてくれているということが、なんとなく、伝わった。
合間に撮影もしっかり。
このお爺さんには去り際タクシーを用意して頂いた挙句、お土産にとバナナまで持たされてしまう始末。
「謝謝!很謝謝!再見!!謝謝!!!很謝謝!」
ありったけの感謝を伝えようにも、かろうじて知っている言葉を繰り返すしかなかった。
帰りのタクシーの中で、なんだか2人とも無言になってしまった。
感傷に浸る「男一匹」冨永諒。
…僕だって同じ気持ちでした。
これは筆談に使ったメモ。
その場では分からなかった台湾語の意味を、ホテルに戻って調べてみました。多分あってるはず…。
「當你父親/私たちは君たちの父親のようなものだ」
「後會有再見面機會/また会える機会があれば必ず会おう」
「回日本説台湾很好/日本に帰ったら、周りに台湾はとても良い所だと話してくれ」
もちろんです!
台湾は、台湾の人たちは、暖かくて、優しくて…大好きです!!
…って、あぁ、なんだ、結局日本語でも、この程度の拙い言葉しか出てこないのだ。
もしかしたら、台湾語ができなくてではなく、ただ自分が自分の思っていることを言葉で伝えることが不得意なだけなのかも知れない。
それでも人と人は、言葉を介さなくても繋がることができる。
それを身を以って知った1日。
そしてそれはきっと、写真も同じ。そう信じている。