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2014年7月山本 遼

【009】単純に、恋をした。

これまで台湾、ベトナム、カンボジアなどさまざまな国を回ってきた。
撮影地に赴く前には日本で調べていたことを振り返り、
その場の環境や生態を頭に入れ直している。
そうやって向かった場所では、良い意味で予想を裏切られることもあれば、
想定の範囲内で終わってしまうこともあった。

しかし、ここは他とは何かが違った。

砂というには石の一粒が大き過ぎる荒涼とした大地。
遠くを見渡せば6000m級の山々が聳え、
頂上の雪が溶け出してできた川が麓まで流れ緑を育む。
谷間に転々と集落を作った人々は田畑をひらき、
牛や羊を飼いながら誇りを忘れずに生き続ける。

『 ―ラダック― 』

インド北方の雪山を越えたパキスタンと中国に挟まれた地域を、人々はそう呼ぶ。

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古くから「小チベット」と呼ばれてきたラダックは、
チベット語で「峠を越えた、峠が多くある」という意味で、
その名が示すとおり、周囲を6,000から7,000メートル級の峨々たる山脈に囲まれている。
そんな過酷な環境にも関わらず昔から東西を行き交う交易路の町として栄えたのが、レー(Leh)。
現在ここには空港や軍事施設、モスク、ゴンパ、沢山の商店やホテルなどが立ち並んでいる。
もちろん、その間を人も牛も羊も犬も、気の向くままに・・・

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町を出て、少し車を走らせれば果てしない風景に出会うことができた。
車窓から今通ってきた道を振り返ると小さく見える車が3台。
俺が先だ、いや俺だ、と言わんばかりに鬩ぎ合うのが見えた。うん、面白い。
砂利、雪、幅狭という3拍子そろった悪路なのに、そんなのおかまいなしのようだった。
多分、ラダックのドライバーをパリダカに出したら皆完走するだろうな、と
その腕に勇ましさを感じながら自分の車のドライバーに目をやった。
バックミラー越しに目が合う。その瞬間、口をにやりとさせ、車のスピードが上がった。

さすが、ラダッキ。

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冒頭で”何かが違った”と書いたが、
今思えばそれはラダックに何か特別なものがあったからじゃなくて、
自分の中で感じた何かがいつもとは違っていたのだと思う。
それは少なからずラダックに魅了された部分はあるのだけれど、
そしてスクーリング後一カ国目の一番最初の撮影地だからというのもあるのだけれど、
でもやっぱりこの土地を、人を、もっと知りたいという欲が大部分で
これまで見てきた場所とはその差が結構あったように思う。

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インド滞在が終わろうとしている今でも、
あの時踏みしめた土の感触や吸い込んだ空気を思い返している。
肌に残る寒さも、日の光を浴びた草の輝きも、雲をかぶった山々も、眩く星空も。
耳にするのは風の音か、動物の声。口にするのは、村のお母さんが入れてくれた甘いチャイ。
五感で感じ、知ったさまざまなこと。
でも、それはまだまだ薄っぺらいカワの一つにしか過ぎない。中がどれだけ深いかも分からない。
だから、またここへ戻ってこようと決めた。時間をかけて少しずつ距離を縮めていこうと。

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僕は、ラダックに恋をした。